アメリカへの留学を考えている人、現在F-1ビザで大学や大学院に通っている人にとって、非常に大きな制度変更が発表されました。

2026年7月、米国土安全保障省(DHS)は、F-1留学生、J-1交換訪問者、Iビザの外国報道関係者などを対象に、これまでの「Duration of Status(D/S)」と呼ばれる滞在方式を廃止し、明確な滞在期限を設定する最終規則を発表しました。

新制度は、現時点では2026年9月15日に発効予定です。

今回の変更で特に重要なのは、

・F-1、J-1は原則としてプログラム期間に応じた滞在期間となり、1回の許可期間は最長4年
・4年を超えて滞在が必要な場合は、原則として延長手続きが必要
・F-1の卒業後Grace Periodが原則60日から30日に短縮
・転校、専攻変更、学位レベル変更などへの制限が強化
・すでにアメリカに滞在しているF-1、J-1保持者にも移行ルールが適用される
・Iビザの外国報道関係者にも固定された滞在期限が導入される

という点です。

これまで学校とSEVISを中心に管理されていた留学生の滞在管理に、USCISによる審査がより直接的に関わる制度へ移行するという、大きな方向転換です。

これは単なる「ビザの有効期限が変わる」という話ではありません。


そもそも、これまでのF-1ビザは「4年ビザ」ではなかった

ここは非常に誤解されやすいところです。

これまでF-1留学生のアメリカ滞在は、一般的に「Duration of Status(D/S)」という仕組みで管理されてきました。

D/Sとは簡単に言えば、

「学生としての資格を正しく維持している限り、そのプログラムに必要な期間、合法的に滞在できる」

という考え方です。

たとえば、4年制大学に入学した学生が、専攻変更や研究、その他の正当な理由によって卒業まで5年かかったとしても、I-20を適切に更新し、F-1ステータスを維持していれば、単純に「4年経ったから不法滞在」ということにはなりませんでした。

博士課程などでは、修了まで5年、6年、それ以上かかるケースも珍しくありません。

つまり、これまでは「ビザスタンプの有効期限」と「アメリカ国内に合法的に滞在できる期間」は必ずしも同じではなかったのです。

しかし、新制度ではこの考え方が大きく変わります。


新制度ではF-1・J-1の滞在に明確な終了日

2026年9月15日以降、新制度の対象となるF-1、J-1保持者には、原則としてプログラム終了日を基準とした明確な「Admit Until Date(AUD)」が設定されます。

F-1、J-1の場合、

プログラムに必要な期間。ただし1回の滞在許可は最長4年

という形になります。

さらに、その終了日がForm I-94に明示されることになります。

たとえば、5年間を予定している博士課程に入ったとしても、最初から5年間の滞在が自動的に認められるとは限りません。

4年を超えてアメリカ国内に滞在する必要がある場合には、原則としてUSCISへのExtension of Stay(EOS:滞在延長)申請、または条件を満たしたうえで出国・再入国して新たな滞在許可を得るといった対応が必要になります。

これは大学院生や博士課程の学生、長期研究を行うJ-1研究者にとって特に大きな変更です。


「4年経ったら強制帰国」ではない

ニュースの見出しだけを見ると、

「F-1ビザでは4年以上アメリカに住めなくなる」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、正確にはそうではありません。

4年は1回の滞在許可期間の上限であり、正当な理由があれば延長申請の仕組みがあります。

問題は、これまで学校側でI-20を延長することで対応できていたケースでも、今後はUSCISへの正式なExtension of Stay申請が必要になる可能性が高くなることです。

USCISの審査では、申請者が引き続きF-1やJ-1の資格要件を満たしているか、不正な滞在ではないかなどが確認されます。

そのため、

「大学がI-20を延長してくれたから、それだけで大丈夫」

という従来の感覚では対応できなくなる可能性があります。


最大の変更のひとつ|卒業後の60日が30日に短縮

F-1留学生にとって、もうひとつ非常に重要なのがGrace Periodです。

従来、F-1学生は学業または認められたOPT終了後、原則として60日間のGrace Periodがありました。

この期間に、

・アメリカを出国する
・別の学校へTransferする
・新しい教育課程へ進む
・条件を満たして別の在留資格への変更手続きを行う

などの準備ができました。

新制度では、この期間が原則として

60日 → 30日

に短縮されます。

30日というのは、実際にアメリカで生活しているとかなり短い期間です。

引っ越し、アパートの解約、荷物の処分、銀行や保険、車の手続き、次の学校への移行、ビザ・在留資格関連の準備などを考えると、卒業してから考え始めるのでは遅いケースも出てくるでしょう。

今後は「卒業後どうするか」を、これまで以上に早い段階から計画する必要があります。


すでにアメリカにいるF-1留学生はどうなる?

ここは特に重要です。

「今すでにF-1でアメリカにいるなら、新制度は関係ない」

というわけではありません。

2026年9月15日の発効日時点で、従来のD/S方式で合法的にアメリカに滞在しているF-1、J-1保持者についても移行規定があります。

ただし、全員が単純に「2026年9月15日から4年間滞在できる」という意味ではありません。

基本的には、

現在のI-20やDS-2019などに記載されたプログラム終了日等

または

新制度発効日から4年

のうち、該当する期限を確認する必要があります。

また、移行対象となるF-1学生については、一定の条件下で従来の60日Grace Periodが維持されるケースがあります。

一方、新制度発効後に一度アメリカを出国し、F-1またはJ-1として再入国すると、新しい日付指定型のI-94が発行され、30日のGrace Periodを含む新制度の対象になる可能性があります。

そのため、現在アメリカにいる人は「自分のケースではいつまで滞在できるのか」を、学校のDSO(Designated School Official)やInternational Student Officeで個別に確認することが重要です。


専攻変更・転校・学位変更にも新しい制限

今回の変更は「4年上限」だけではありません。

学生にとっては、むしろこちらの方が長期的な影響が大きい可能性があります。

新規則では、F-1学生の教育上の移動、いわゆるAcademic Mobilityにも新たな制限が設けられます。

特に注意したいのが、

・学校間のTransfer
・専攻や教育目的の変更
・学位レベルの変更
・同じ、またはより低い学位レベルへの進学

です。

たとえば、

Bachelor’s Degreeを取得

別分野のBachelor’s Degreeへ

あるいは、

Master’s Degreeを取得

別分野のMaster’s Degreeへ

といった「同レベルへの再進学」について、新制度ではこれまでより厳しい制限がかかります。

いわゆる「Lateral Matriculation(同レベルへの進学)」や「Reverse Matriculation(より低いレベルへの進学)」が問題になるケースです。

また、大学院レベルでは教育目的の変更にも制限があり、一部については特別な事情がある場合に例外を求める仕組みが設けられています。

つまり今後は、

「まずアメリカに留学して、あとから専攻を変えればいい」

「卒業後、別の学校で同じレベルの学位をもう一つ取ろう」

という留学プランが、以前ほど簡単ではなくなる可能性があります。


実はこの「4年ルール」、突然出てきた話ではない

今回の制度変更には前史があります。

トランプ政権下では以前から、F・Jビザ保持者のDuration of Status制度を廃止し、固定された滞在期限へ変更する構想がありました。

そして2025年8月、DHSは改めてF、J、Iビザの滞在を固定期間に変更する規則案を公表しました。

この規則案には非常に多くの意見が寄せられました。

Federal Registerによると、パブリックコメントは21,924件

大学、国際教育関係者、移民法専門家などから多くの懸念が示されました。

特に問題視されたのが、

・博士課程は4年以上かかることが多い
・研究スケジュールは必ずしも予定通り進まない
・USCISへの延長申請が増えれば審査負担が増える
・留学生本人の費用と事務負担が増える
・アメリカの大学の国際競争力が低下する可能性

といった点です。

それでもDHSは2026年7月、最終規則として制度変更を決定しました。


アメリカには約118万人の留学生がいる

この制度変更が大きなニュースになる理由は、対象となる留学生の規模です。

Institute of International Education(IIE)のOpen Doors 2025によると、2024/25年度にアメリカの大学・高等教育機関で学んだ留学生は、

1,177,766人

でした。

約118万人です。

しかも、これは前年から約5%増加しています。

近年の推移を見ると、

2020/21年度:約91.4万人
2021/22年度:約94.9万人
2022/23年度:約105.7万人
2023/24年度:約112.7万人
2024/25年度:約117.8万人

となっています。

コロナ禍で大きく落ち込んだ後、アメリカの留学生数は急速に回復してきました。

一方で、新規留学生だけを見ると少し違う動きがあります。

2023/24年度の新規留学生は約29.9万人でしたが、2024/25年度には約27.7万人となり、7.2%減少しました。

つまり、留学生全体は過去最高水準に近い一方、新しくアメリカを選ぶ学生の勢いにはすでに変化が見え始めています。


留学生はアメリカ経済に約550億ドルをもたらしている

留学生は単に「海外から来て勉強している人」ではありません。

アメリカ経済にとっても非常に大きな存在です。

Open Doors 2025によると、国際学生は2024年にアメリカ経済へ約550億ドルを貢献したとされています。

さらに、国際教育分野のデータでは、留学生の存在が全米で35万件を超える雇用を支えているとされています。

留学生は、

大学の授業料
学生寮・家賃
食費
交通費
保険
旅行
日常生活での消費

などを通じて、大学だけでなく地域経済にも大きく貢献しています。

そのため、留学生が減少すれば影響を受けるのは大学だけではありません。

特に留学生比率の高い大学や大学院、地方都市の大学では、授業料収入や地域経済への影響が懸念されています。


なぜDHSは制度を変えるのか?

DHSが挙げている大きな理由は、

制度悪用の防止と国家安全保障の強化

です。

これまでのD/S制度では、F-1学生が正しく在籍しSEVIS上の資格を維持していれば、入国時に明確な滞在終了日が設定されないケースが一般的でした。

DHSは、長期間にわたり複数の教育プログラムに在籍し続けることでアメリカ滞在を長期化させるなど、制度を悪用するケースがあると主張しています。

固定された滞在期限を設定し、一定期間ごとにUSCISが延長の可否を審査することで、

「本当に学生として滞在しているのか」

「引き続き資格を満たしているのか」

を連邦政府が直接確認できるようにする、というのが制度変更の考え方です。

一方、大学や国際教育関係者からは、

「F-1やJ-1はすでにSEVISで厳しく管理されている」

「ごく一部の制度悪用を理由に、正規の留学生全体へ大きな負担を課すことになる」

との批判も出ています。


日本人留学生への影響は?

日本からアメリカへ留学する人にとっても、今回の変更は決して他人事ではありません。

特に影響が大きいと考えられるのは、次のような人です。

1.博士課程や長期研究を予定している人

Ph.D.など4年以上かかる可能性の高いプログラムでは、途中でExtension of Stayが必要になる可能性があります。

研究は予定通りに進むとは限りません。

論文、実験、指導教授の変更、研究テーマ変更などで卒業が延びることは珍しくないため、早めの確認が必要です。

2.アメリカで専攻変更を考えている人

「まず入学してから自分に合う専攻を探す」という方法は、今後より慎重に考える必要があります。

特に大学院では教育目的の変更に制限があるため、入学前のプログラム選びがこれまで以上に重要になります。

3.卒業後にアメリカで次の進路を考えたい人

新制度対象者は、卒業後のGrace Periodが原則30日になります。

「卒業してから考えよう」では時間が足りない可能性があります。

卒業数カ月前から、

OPT
次の学校
帰国
在留資格変更
就職

などの選択肢を整理しておく必要があります。

4.語学学校→大学→大学院と長期留学を考えている人

これまでのように複数の教育プログラムを柔軟につないで長期間滞在する留学計画についても、新しいAcademic Mobilityのルールを確認する必要があります。


私自身も「F-1留学生」からアメリカ生活を始めました

私自身、21歳で日本からアメリカへ留学したことが、長いアメリカ生活のスタートでした。

当時は今のようにインターネットで簡単に最新のビザ情報を調べられる時代ではありません。

学校を選び、ビザを取り、アメリカに来て、英語を学びながら大学へ進む。

留学生にとって「次に何をするか」をアメリカに来てから考える余地は、今よりずっと大きかったように思います。

だから今回のニュースを見たとき、単なる「ビザ制度の変更」とは感じませんでした。

これからアメリカを目指す若い人たちにとって、

留学の途中で進路を考える自由が、少しずつ狭くなっているのではないか。

そんなことも感じます。

もちろん、F-1ビザはあくまで「学ぶため」のビザです。

ルールを守ることは当然ですし、不正利用を防ぐ仕組みも必要でしょう。

ただ、18歳や20歳で自分の将来をすべて決められる人ばかりではありません。

実際に海外へ出て、英語を学び、さまざまな人と出会って初めて、

「この分野を勉強したい」

「大学院へ行きたい」

「研究を続けたい」

と気づくこともあります。

私自身も、アメリカに来た時点で、その後何十年もここで生活し、仕事をし、MBAまで取得する未来をすべて描いていたわけではありません。

留学とは、予定表通りに進むだけのものではないと思うのです。

だからこそ、制度が厳しくなる時代には、以前以上に「知らなかった」で損をしないことが大切になります。


これからアメリカ留学を考える人が確認すべき5つのこと

今回の変更を踏まえると、これからアメリカ留学をする人は、学校選びを「ランキング」や「学費」だけで決めるのではなく、ビザ制度まで含めて計画する必要があります。

① I-20/DS-2019のProgram End Dateを必ず確認する

自分が「何年制の学校にいるか」だけでなく、移民法上いつまでの滞在が認められているのかを確認しましょう。

② Form I-94を確認する習慣をつける

新制度ではI-94上のAdmit Until Dateがこれまで以上に重要になります。

③ 4年以上かかる可能性があるなら早めに相談する

博士課程、研究、卒業延期などが想定される場合、期限直前ではなく早い段階からInternational Student Officeへ相談することが重要です。

④ 転校・専攻変更・学位変更を自己判断しない

新制度ではAcademic Mobilityに新たな制限があります。

必ずDSOなど学校の留学生担当者に確認してから動くことが大切です。

⑤ 卒業後の計画を早めに決める

新制度対象者は30日のGrace Periodが基本になります。

OPT、進学、帰国、別ステータスへの変更などは、卒業前から準備しましょう。


Iビザの報道関係者にも大きな変更

今回の制度変更は留学生だけではありません。

新聞、テレビ、映像、その他の外国メディア関係者が利用するIビザについても、固定期間による滞在管理が導入されます。

原則として、報道活動・任務の期間に応じて最大240日の滞在許可となり、それを超えてアメリカ国内で活動を続ける場合には、必要な延長手続きが求められます。

長期間アメリカに駐在する外国メディア関係者にとっても、大きな制度変更になります。


2026年9月15日発効予定。ただし今後の動きにも注意

最終規則は2026年7月17日にFederal Register(米連邦官報)に掲載されました。

現時点での発効予定日は、

2026年9月15日

です。

ただし、この規則はCongressional Review(議会審査)の対象となるMajor Ruleに分類されています。

また、今後訴訟などによって実施時期や内容に影響が出る可能性もゼロではありません。

そのため、

「ニュース記事を一度読んだから大丈夫」

ではなく、

DHS
USCIS
ICE / SEVP
学校のInternational Student Office
DSO

などから最新情報を確認することが重要です。


まとめ|「アメリカ留学4年まで」だけでは理解できない大きな制度変更

今回のニュースは「アメリカの留学生ビザが4年までになる」という見出しだけが広がりやすいですが、実際の内容はもっと複雑です。

重要なのは、

4年以上アメリカに留学できなくなるわけではない。

しかし、

これまでのように学生資格を維持していればD/Sで滞在を続けられる制度から、明確な期限を設定し、必要に応じて政府の審査を受けて延長する制度へ変わる。

ここが最大のポイントです。

そして、

卒業後のGrace Period短縮、
転校や専攻変更への制限、
同じ・低い学位レベルへの再進学制限、
USCISへの延長申請、
I-94の期限管理

など、留学生自身がこれまで以上に「自分のステータスを自分で管理する」必要が出てきます。

アメリカは長い間、世界中の学生が「新しい可能性」を探しに来る国でした。

2024/25年度には約118万人の留学生がアメリカで学び、年間約550億ドル規模でアメリカ経済にも貢献しています。

今回の制度変更が、不正防止や安全保障の強化につながるのか。

それとも、優秀な学生や研究者の「アメリカ離れ」を加速させることになるのか。

その答えが見えてくるのは、これからかもしれません。

ただ、これからアメリカ留学を考える人に一つ言えるのは、

「行ってから考える留学」から、「その先まで計画して行く留学」へ。

アメリカ留学の形そのものが、大きく変わろうとしています。

※この記事は2026年7月20日時点で公表されている情報をもとに作成しています。移民・ビザ制度は変更される可能性があります。個別のケースについては、所属学校のDSO(留学生担当者)、USCISの公式情報、必要に応じて移民法専門の弁護士へ確認してください。